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執筆者の写真ヨシイケシンイチ

増版の難しさ

半年ちょいぶりの更新になります。ヨシイケです。

前回、ゲームマーケット2023秋には何か出展したいと考えている……などと書きましたが結局のところ何だかんだあってそれは叶いませんでした。半年という時間は長いようでボードゲーム制作という世界ではとても短い……そう思う今日この頃です。


さて今回は何の話かというと、タイトルの通り増版についてです。

実は現在私は悩んでいることがあります。 私が制作したゲームはいくつかありますが、その中の一つ「走れ! メトロ」はおかげさまで好評でこのタイトルだけやけに売れているのですが、結果、現在売り切れとなっています。BOOTH他、いくつかの販売ルートがありますがいずれの場所でも売り切れです。つまり世界中どこを探しても現在新品を売っているところはありません。

その上、いくつかのサイトでは「入荷待ち」をお知らせしてくれる機能が備わっていて、すでに何件か「走れ! メトロ」の入荷待ちをされている方がいるのが分かっています。で、どうしたものか……と悩んでいるというわけです。


だったら追加を作ればいいじゃん、そうおっしゃられる向きもあると思いますが話はそう簡単ではないのがボードゲーム制作というものです。 これは私の狭い知識の中での話でかなり主観的でもありますが、数ある同人界隈の中でも増版とか、同じものを追加で生産するという行為においてボードゲームというのはもっともハードルが高いものの一つだと思います。

それは「必要部材の多さ」と「その部材の汎用性の低さ」「部材の他者依存の高さ」というところにあると考えています。

まず必要部材の多さについて。ボードゲームは1つの商品に含まれる「部材」が非常に多岐に渡ります。例えば同人誌であれば1冊の本だけですが、ボードゲームの場合、構成要素としては箱、説明書、その他コンポーネント等々があります。これらが全部揃っている必要があります。当然これらはその都度作らねばなりません。

そして次の問題がそれら部材が大抵、汎用性が低いということです。例えば箱だったら、一度作ってしまったら他のボードゲームの箱として再利用することはできません。当然説明書やら他の専用のコンポーネントも同様です。作ったが最後、他に流用はできないので全部売り切るまでは在庫として最後まで面倒を見なければなりません。(ありもので間に合わせられそうなものはせいぜい、サイコロとかカラーキューブくらいでしょうか)

そして一番の問題となるのが、それら部材の大半は自分で作ることができず印刷所任せになるということです。それは同人誌とかでも同じなのでは? と言われればその通りですが残念ながらボードゲームで必要な部材は同人誌より融通が利きません。

一番の違いは「価格」です。知っている方も多いと思いますが、何かを製造するとき、生産数によって1個あたりの単価は変わります。工業製品でも食品加工でも何でもそうですが、それは印刷所も同様で同人誌にしろボードゲームにしろ、生産数で単価は結構変わります。そしてそれは、少数生産や、再生産がしにくいものほど差が顕著になります。端的に言えば同人誌よりもボードゲームの方が生産数による価格差はかなり激しく変わります。価格差は当然最終的な提供価格に影響を与えてきます。なので同人界隈の作り手の方々はまず「この商品はこれくらいの値段にしたいから、これくらいの製造単価にしたい。となると製造数はこれくらいか」と逆算します。もちろん数が多ければ単価が下がると言っても作った物は全部捌ききれないと意味がないので、どれくらい売れそうかということも考えて価格と数量の折り合いを付けて生産数を決めています。この1回の生産数を「ロット」と言って、ずっと同じ価格で商品を提供しようと考えた場合、基本的には毎回ロットの数は同じにします。

で、話は戻りますが、幸いにして(あるいは不幸にも見積もりが甘くて)想定以上に売れてしまい、増刷の必要性を感じるようになってきたときに立ちはだかるのがこのロットになります。

最初のロットで仮に100個製造した場合。注文が100個どころかまだまだ大量にあるというのなら幸せです。100個以上作れば単価はもっと下がるので好きな数で再生産すればいいでしょう。問題は100個までは売れそうにない(が、放置するにはもったいない)注文数だった場合。仮に50個とすると、望ましいのは50個作って売ることですが、上で散々書いたように、50個製造にすると製造単価は恐らくかなり上がってしまうでしょう。下手すると同じ販売価格ではアシが出てしまうかも知れません。こうなると考えられるのは二者択一、100個作って在庫の50個は時間をかけてでもどうにか売れるまで面倒を見る、もしくは50個の販売機会は見なかったことにする、のどちらかです。

この話の辛いところは、ボードゲームの場合部材の他者依存の高さが極めて高いというところです。例えばハンドクラフトメイドなどで見かける手作りぬいぐるみなどだったら。1個1個手作りなのでとても大変ですが(私も経験があるので分かりますが)、材料の羊毛等さえあれば、追加生産は自分の努力だけなのでそんなに困らないのです。余った羊毛は別のものを作るのにも流用できますし余ったからと言って困ることはありません。でもボードゲームの箱やコマなどはそうはいきません。全部印刷所にお願いしなければならないし、余っても使い道はありません。


……というわけで、ボードゲームは売り切れたからと言って簡単に増刷はできない、という話になるわけです。

結構前の話になりますが、私も以前「ボードゲームは一期一会。ゲームマーケットでちょっと気になるものを見かけたら躊躇わずに買え」と言われたことがあります。当時は何のことやらと思ったりもしましたが今ならよく分かります。つまり、同人ボードゲームは、基本的に再生産はされないと思え!


以上長話になりましたが、私が悩んでいる状況が分かって頂けたと思います。「走れ! メトロ」はすでに1回再生産をおこなっているタイトルで(ルール変更、デザイン変更などもおこなった、2nd Editionという名称になっています)、もしまた再生産するとなると3ロット目となりますが、ロットの数が結構多いのでさすがに難しいかなあ……と思っています。これを打開するには「入荷待ち」の件数が跳ね上がること、これに尽きます。だから再生産のために、みんな、オラにもっと力を!


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